紙飛行機の飛ばし方 How to fly origami planes

 ↑第3回国際折紙飛行機コンテストで拙作品のC-15戦闘機をテストする審査員(残念ながらお名前は存じません)

はじめに

いきなり無責任なことを申して恐縮ですが、紙飛行機の飛ばし方は、日本折り紙ヒコーキ協会の戸田拓夫さん、また、切り紙飛行機で世界的に有名な二宮康明さんといった方々の優れたアドバイスを参照されるのが良いと思います。

私の場合、ほとんど全てがジェット戦闘機タイプで、原紙の大きさに比べて出来あがりの翼面積が小さく、いわゆる翼面荷重が高いため、沈みが大きく、長い滞空時間は期待できません。飛行距離は割合稼ぎますが、スピードが出るので少しの歪みがあっても容易に横転してしまいます。また何度も飛ばしていると機首がつぶれて、醜くなります。

というわけで、飛行に関しては、とりあえず「おもり」無しで飛べば良いという程度に割り切って、それよりも作品の出来栄え(スタイル)を楽しんでおります。

もっとも、比較的単純なF-4やF-136、グライダー的な細長い主翼で高性能を狙ったF-128あたりは割合よく飛んでくれます。F-128はかつて防衛大学校の総合体育館で飛行距離約25メートル、滞空時間約6秒を記録しています。

「とりあえず飛ぶかどうか」のテスト法(自己流)

オリジナルの紙飛行機を作ったとき、その機体が舵の調整次第では飛ぶのか、それとも、いかに努力しても飛ばないのか、それを見極める簡単なテストがあります。

それは、立った状態で、両手で機首と尻尾をそれぞれつまんで水平に保持し、空中でパッと放すのです。

① 水泳の飛び込み選手のように頭からスッと落ちていけば、とりあえずその機体は、性能の良しあしはともかくとして、飛んでくれる機体です。頭からスッと行って、その後で上下左右にブレる場合も、合格です。舵面を調整すれば飛びます。

② 頭からスッと行かずにモタついたり、最後まで水平のままだったりしたら、その機体は翼にくらべて重心が後ろ過ぎるので、飛びません(もし飛ばしたら、のけぞるようにして失速し、墜落すると思われます)。この場合、翼の前の方を小さくして、相対的に重心位置を前進させます。頭からスッと行くようになるまで改良とテストを繰り返して下さい。

③ あまりにも頭からスッと行きすぎる場合には、重心が前過ぎることがあります。このような機体は滑空というよりもダーツのような弾道飛行になって面白味がありません。②のパターンに陥らない程度に、翼の前の方を大きくしてやると良いでしょう。

※ 折り紙飛行機では、頑張ってもなかなか重心の位置を移動できませんから(おもりを用いれば別ですが)、翼の形状を変えるほうが手っ取り早いのです。

OAF-sample1.jpgOAF-sample2.jpg

 ↑左の機体は翼の前縁が大きく、相対的に重心が後方にある(→②の傾向)。右の機体は翼が後退して、相対的に重心が前方にある(→③の傾向)

舵面の基本的な調整法

 下の図に、飛行機の構造や運動に関する用語を掲げました。以後の説明で必要になります。

昔ながらの紙飛行機は大抵そうですが、水平尾翼(水平安定板+昇降舵)を持たない、いわゆる「無尾翼機」では、補助翼と昇降舵が兼用になっており、elevatorとaileronをかけてエレボン (elevon) と言います。 

また、折り紙飛行機の場合(本物の飛行機とは異なり)補助翼とフラップに明瞭な境界はありません。主翼後縁の外寄りを補助翼、内寄りをフラップと言い、補助翼は横の姿勢をコントロールする舵ですが、フラップは機体を浮かせる「揚力」を増強するもの(高揚力装置)です。補助翼とフラップを兼用した「フラッペロン」という概念もあります。

なおここで、「縦」といえば機首が上下する向き、「横」といえば左右主翼の端が上下する向き、「方向」といえば機首が左右する向き、であることは覚えておいて下さい。たとえば「横の安定性が悪い機体」というと、飛行中に横転や錐もみに陥りやすい機体のことです。先ほどの自己流テストで②に該当する機体は、縦の安定性が悪いということになりますね。

で、飛行機が完成したら、まずはまっすぐ飛ぶように舵を調整します。折り紙飛行機の場合、あまり固い紙は使いませんし、なにしろ折ることによって作るのですから、どうしても歪みが生じがちです。飛行機を手で持って、機首の方から見て、翼にねじれがないかチェックします。

とくに、左右差に注意します。右の補助翼は下がって、左が上がっていたりすると、飛行機は左に曲がります。極端な場合、左に錐もみしてしまいます。

おおまかな歪みが治せたら、次に主翼と尾翼を調整します。

【無尾翼機】 先ほど述べたように、伝統的な折り紙飛行機はたいていがこれです。無尾翼機の場合、エレボンを左右均等に少しだけ上に曲げます。いわゆる「上げ舵」です。これをしないと頭から地面に突っ込みます。

【通常型機】 本物の旅客機のように主翼と水平尾翼が分かれている機体では、主翼の断面をカマボコ型に曲げます。先ほどの図でいえば、断面A,B,Cがそれぞれ「⌒」の形になります。本物の飛行機や鳥の羽根、扇風機の羽根などもこのような断面をしています。これをキャンバーといいまして、このほうが機体を浮かせる「揚力」が大きくなるのです。なお、昇降舵は上や下に曲げず、「中立」にしておきます。

【先尾翼機】 ユーロファイター・タイフーンとか、帝国海軍の試作戦闘機「震電」のように、主翼の前に水平尾翼(尾翼というのも変ですが)があるタイプです。この場合は、先尾翼の昇降舵を少し下に曲げます。先尾翼機の昇降舵は、それ以外のタイプとは働きが逆になることを覚えておいて下さい。

なお垂直尾翼については、明らかな歪みを直したら、方向舵を中立にしておきます。

これでまずは、風のないところで、人のいない方に向けて飛ばします。十分に広いところでなければ、カーテンなど柔らかいものに向けて飛ばすのが良いです。壁に何度も衝突させるのは飛行機の傷みを早くしますので。

飛行機の重心付近を持って、水平方向に投げてみて下さい。

最初から上下左右に曲がらず、まっすぐスーッと飛ぶことはまずありません。

たいていは、右または左に曲がる、傾いて横転または錐もみ(横方向のスピン)する、機首を下げて床に突っ込む、あるいは機首が上がって失速する(横から見ると平仮名の「へ」のような軌跡をたどる)、等々です。

最初に書き忘れましたが、紙飛行機、とくに折り紙飛行機をうまく飛ばすのは、簡単そうで、実はなかなか難しいのです。

(^^;)とくに私の場合、他人が見ているとうまく飛ばないことが多いです。

…それはともかく、折り紙飛行機を飛ばすには根気よく調整する必要があります。

まずは水平直線飛行を目指しましょう。

最初に原則ですが、ある翼の後縁を下に曲げておくと、飛ばしたときに、その翼に上向きの力(=揚力)が働きます。旅客機で、主翼の少し後ろに乗ると、離着陸のときに主翼後縁からフラップがせり出して垂れ下るのが見えます。離陸のときは当然大きな揚力(浮く力)が必要ですし、着陸の際はエンジン出力をしぼって減速して行きますから、それでも安全に「ヤンワリと」着陸するために、やはり大きな揚力が必要になります。そのために主翼後縁を下に曲げているのです。また、よく観察するとフラップより外側の部分が飛行中に微妙に上がり下がりしており、上がったときには主翼先端が下がって機体がそちらに傾き、下がったときには反対側に傾くのが分かります。

ただし曲げ過ぎると気流の乱れが生じて逆に揚力が失われます。

逆に後縁を上に曲げるとその翼は押し下げられます。

飛行機の調整は、いわば「やじろべえ」のようなもので、飛行機の重心位置がやじろべえの脚、翼がやじろべえの腕に相当します。やじろべえは腕が2本ですが、これがもっとたくさんあると思って下さい。ではまず縦方向の調整から…

【縦方向の調整】 機首から床に突っ込んでいくような場合、「上げ舵」にします。機首が上がり過ぎて失速する場合には「下げ舵」にします。以下は上げ舵の方法です。

  無尾翼機: 左右のエレボンを上に曲げる

  通常型機: 左右の昇降舵を上に曲げる

  先尾翼機: 左右の昇降舵を下に曲げるか、左右の補助翼またはフラップを上に曲げる

通常型機において昇降舵を上に曲げるということは、水平尾翼が下がって機首が上がるということです。無尾翼機も基本的には同様で、大きな一枚の翼の後ろの方が下がるから機首が上がるのす。

先尾翼機の場合、昇降舵を下に曲げるということは、先尾翼が持ち上がって機首が上がるということです。逆に先尾翼機の補助翼またはフラップを上に曲げるということは、主翼が沈むことによって反対に機首が上がるということです。ちなみに前者は全体の揚力が増えるのに対して、後者では全体の揚力が減少しますから、飛行距離や飛行時間は短くなります。したがって先尾翼機の場合、機首を上げたいのであれば、なるべく昇降舵を動かし、それでは不十分なときに主翼の調整をします。機首を下げたい場合は逆で、主翼後縁をいじるほうが得策です。

【横方向の調整】 機体が右に曲がる、あるいは右に傾いて飛ぶ場合、右側の揚力をかせぐか、左側の揚力を減らすか、その両方を組み合わせるか、です。この場合、基本的には補助翼を調整します。右の補助翼を少し下げる、または左の補助翼を少し上げる、あるいは両方ミックスです。ただし、補助翼というのは重心から遠く離れたところにあるので、少し動かしただけでも大きく作用します。やじろべえの腕に重りをつけるのに、胴体近くだとあまり傾かないけれど、腕の先端につけると大きく傾くのと同じです。ですから、あくまで微調整にとどめたい場合には、より胴体側にあるフラップや昇降舵の角度を左右で調整してみて下さい。実際、本物の飛行機でも横方向の運動を左右昇降舵の差動でコントロールする機種があります。

なお、「左右の傾きは横方向の調整だけど左右に曲がるのは『方向』の調整だから方向舵で行うのだろう」と思った方は、なかなか鋭いです。しかし経験上、垂直尾翼がよほどねじれているとき以外、その調整は最後に行った方が良いように思います。飛行機の横安定と方向安定は密接に連動しておりまして、たいてい、傾いた方に曲がります。この点、飛行機の運動は自転車やバイクに似ています。

主翼や水平尾翼をあれこれいじっても、どうしても右、または左に行こうとする場合には、方向舵を少しだけ、反対方向に曲げてみて下さい。

【縦・横の調整を統合する】 最初は縦・横の調整を一つずつ済ませて行くのが確実ですが、慣れてくると、トータルで調整したほうが話が早くなります。

① 例えば無尾翼機がゆっくりと右に横転しながら、機首を下げて床に向かって突っ込んでいったとします。この時、まず横方向を調整しようと思って右のエレボンを下げてしまうと、横転は改善するかも知れませんが、突っ込みはますますひどくなります。ですからこの場合は、左のエレボンを少し上げるのが正解です。それで横転しなくなって、なおかつ突っ込む場合、左右のエレボンを同じだけ、少しずつ上げて調整していきます。

② 先尾翼機が機首を上げて失速し、かつ、少しだけ左に傾いていたとします。この場合、昇降舵を上げ(下げ舵)、右補助翼を上げ、左補助翼を下げるのがオーソドックスですが、前述の通り、先尾翼機の昇降舵の「下げ舵」は揚力の損になります。また右補助翼を上げるのは、右側に限っては「上げ舵」になって昇降舵の「下げ舵」とケンカしてしまいます。そこで、この場合は左の補助翼だけを下げることが考えられます。しかし、補助翼を動かすと大きな横方向の運動が起きるので、逆に右に傾いてしまうかも知れません。ですから、まずは左主翼の内側部分(フラップ)を下げるのが正解でしょう。

(続く)…この先は、工事中です(なお青字はH25.1.11追記部分です)